備蓄のすすめ|3日分では生き残れない

政府発表の食料自給率は38%。
しかしこれは種も肥料も原油も届く前提の数字。
実質自給率はわずか5%――
輸入が止まれば、スーパーの棚は数日で空になります。

「3日分の備蓄で十分」は過去の話。
このページでは、なぜ今すぐ備蓄が必要なのか、7つの根拠と実際の備え方を紹介します。

1東大教授の警鐘「7,200万人が餓死する」

空になったスーパーの棚
食料輸入が止まった場合、日本人の約6割にあたる7,200万人が餓死する。これは東京大学大学院の鈴木宣弘特任教授(農業経済学)が、米ラトガース大学の研究を基に警鐘を鳴らしている数字です。

出典:鈴木宣弘『世界で最初に飢えるのは日本』(講談社+α新書・2022年)、Rutgers University "Nuclear winter and food security" (Nature Food, 2022)

ラトガース大学の研究では、局地的な核戦争が起きた場合の食料生産への影響を5段階で試算しています。最も小規模な想定でも、核攻撃による直接の死者は約2,700万人ですが、その後の食料生産の減少と物流停止による餓死者は世界で2億5,500万人。そのうち日本の餓死者が7,200万人と、全体の約3割を占めるとされています。

なぜ日本に被害が集中するのか。それは食料自給率の低さに尽きます。カロリーベースで38%の日本は、世界的な食料危機が起きたとき、最も脆弱な国のひとつです。さらに鈴木教授は、種や肥料の海外依存度を考慮すると、実質的な自給率は10%にも満たない可能性があると指摘しています。

38%
食料自給率
(カロリーベース)
10%以下
実質自給率
(種・肥料含む)
7,200万人
餓死の想定
(最小規模シナリオ)

出典:農林水産省「令和6年度食料自給率」(2025年10月公表)、鈴木宣弘教授の講演・著書より

核戦争は極端なシナリオに思えるかもしれません。しかし、台湾有事・パンデミック・異常気象など、食料輸入が途絶する原因は核戦争だけではありません。重要なのは、いざ輸入が止まったときに日本が自国民を養えない構造になっている、という事実です。

📖
『世界で最初に飢えるのは日本 ― 食の安全保障をどう守るか』
鈴木宣弘 著(講談社+α新書・2022年)
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2食料自給率の真実

日本の田園風景

2025年10月、農林水産省は令和6年度(2024年度)の食料自給率を公表しました。カロリーベースで38%。4年連続で横ばいが続いています。生産額ベースでは64%ですが、実際に「食べて生きていけるか」を測るカロリーベースの方が、有事の際には意味を持ちます。

出典:農林水産省「令和6年度食料自給率について」(2025年10月10日公表)

日本の食料自給率(カロリーベース)の推移
出典:農林水産省「食料需給表」各年度
主要先進国の食料自給率(カロリーベース)比較
出典:農林水産省「世界の食料自給率」(諸外国は2021年試算値、日本は2024年度)

日本は主要先進国の中で最低水準です。カナダ221%、オーストラリア200%、フランス117%、アメリカ115%と比較すると、その差は歴然です。

「コメがあるから大丈夫」は本当か?

日本のコメの自給率は約100%ですが、そのコメを育てるための化学肥料(リン・カリウム)はほぼ100%輸入に頼っています。飼料自給率は26%に過ぎず、畜産物の国内生産も輸入飼料がなければ成り立ちません。

26%
飼料自給率
(2024年度)
≒100%
肥料原料の
輸入依存度
45%
政府目標
(2030年度)

出典:農林水産省「食料・農業・農村基本計画」(2020年閣議決定)、農林水産省「令和6年度食料自給率」

種が止まれば、野菜も止まる

野菜の種の袋が並んでいる様子

スーパーに並ぶ野菜の種の約90%は海外で生産されています。しかも現在主流の「F1種(一代交配種)」は、収穫した種を翌年まくことができません。毎年、海外から種を買い続けなければ、翌シーズンの作付けすらできない構造です。

50年前、日本の野菜の種の自給率は99%でした。それが今では10%以下。もし種の輸入が途絶すれば、野菜の実質自給率はわずか8%程度にまで落ちるとされています。

90%
野菜の種の
海外生産比率
8%
種が止まった場合の
野菜の実質自給率
99%→10%
50年間での
種の自給率低下

出典:農林水産省「種苗をめぐる情勢」、鈴木宣弘『世界で最初に飢えるのは日本』

肥料が止まれば、収量は半減する

肥料の袋と田園風景

日本の農業に不可欠な化学肥料の三要素のうち、リン酸とカリウムは100%を輸入に頼っています。国内にはリン鉱石もカリ鉱石も産出しません。これらが止まれば、作物の収量は最大で半減するとされています。

畜産も同様です。卵の自給率は数字上97%ですが、鶏の飼料となるトウモロコシはほぼ100%を輸入に依存しています。飼料が止まれば鶏を養えないため、卵の実質的な自給率はわずか12%にすぎません。

100%
リン酸・カリウムの
輸入依存度
半減
肥料が止まった
場合の収量
12%
卵の実質自給率
(飼料自給率考慮)

出典:農林水産省「肥料をめぐる情勢」、農林水産省「食料自給率の推移」、鈴木宣弘教授の試算

原油が止まれば、全てが止まる

タンカーと製油所

日本のエネルギー自給率はわずか13.3%(2022年度)。原油・天然ガスのほぼ全量を海外から輸入しています。原油が止まるということは、食料を「作る・運ぶ・保存する」全ての工程が停止することを意味します。

原油が止まると何が起きるか
原油の輸入が停止
トラクター・農機が動かない → 耕作不能
ビニールハウスの原料(石油製品)が枯渇 → 冬季栽培不能
トラックが動かない → 産地から店舗へ届かない
冷蔵・冷凍設備が停止 → 食品が腐敗
水道ポンプが停止 → 断水
精米機が動かない → 玄米を白米にできない
食料の生産・流通・保存が全面停止

出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書2024」(エネルギー自給率13.3%は2022年度確報値)

表面の自給率38%は幻想にすぎない

農水省が公表する食料自給率38%は、種・肥料・飼料・エネルギーが全て安定供給される前提の数字です。鈴木宣弘教授は、これらの海外依存を考慮した「実質自給率」を9.2%と試算しています。

経済評論家の三橋貴明氏も同様の指摘をしています。エネルギー自給率がわずか13%の国で、食料自給率だけを議論しても意味がない。原油が止まればトラクターも動かない、トラックも走らない。農業生産そのものが成り立たない――。鈴木教授と三橋氏は、原油・エネルギーまで含めた実質自給率は約5%と見ています。

出典:三橋貴明氏YouTube・著書での発言、鈴木宣弘教授の試算

38%
表面上の自給率
(農水省公表)
9.2%
実質自給率
(種・肥料・飼料含む)
鈴木教授試算
約5%
原油・エネルギー含む
実質自給率
鈴木教授・三橋氏

出典:農林水産省「令和6年度食料自給率」、鈴木宣弘教授の試算、資源エネルギー庁「エネルギー白書2024」

政府発表 vs 実態 ― なぜこんなに違うのか

品目別:政府発表の自給率と、輸入が止まった場合の実態
品目 政府発表の自給率 実態(種・飼料・肥料が止まった場合)
野菜 80% 種が止まれば8%、肥料も止まれば4%
97% 飼料が止まれば12%(トウモロコシ100%輸入)
コメ 98% 肥料100%輸入、種子法廃止で種も危うい
畜産 飼料自給率26% 飼料が止まれば壊滅
全体 38% 鈴木教授試算で9.2%、原油含めればさらに↓
なぜこんなに違うのか? 政府の数字は「種も肥料も飼料も原油も全部届く前提」で計算しているからです。その前提が崩れたら、数字も崩れます。

出典:農林水産省「食料自給率の推移」「種苗をめぐる情勢」「肥料をめぐる情勢」、鈴木宣弘教授の試算

日本人の約9割は、輸入が止まったら食べていけない
種の90%、肥料の100%、エネルギーの87%を海外に依存する日本。
表面上の自給率38%は、全てが正常に動いている前提の数字です。
ひとたび輸入が途絶すれば、国民の大多数が食料を確保できなくなります。
ポイント:自給率38%は、食料の約6割を海外に依存しているということ。種・肥料・飼料・エネルギーまで含めれば、日本は「自分で食べていけない国」と言っても過言ではありません。

3家畜の大量殺処分

養鶏場のイメージ

日本では毎年のように、鳥インフルエンザや豚熱(CSF)などの家畜伝染病が発生し、大量の殺処分が行われています。一度殺処分されると、畜産の回復には数年単位の時間がかかります。

鳥インフルエンザによる殺処分羽数の推移
出典:農林水産省「鳥インフルエンザに関する情報」各シーズン

主な家畜伝染病の被害

出典:農林水産省「高病原性鳥インフルエンザ疫学調査報告書」(2025年7月)、農林水産省「口蹄疫に関する情報」、宮崎県口蹄疫復興対策資料

殺処分の影響は食卓に直結します。鶏卵の供給減は卵の価格高騰に、豚の殺処分は豚肉不足につながります。回復までに2〜3年かかるため、その間は品薄と高値が続きます。

4食品価格の値上がり

スーパーの値札と買い物かご

帝国データバンクの調査によると、食品の値上げは「一時的なもの」ではなく、構造的に常態化しています。

年間の食品値上げ品目数の推移
出典:帝国データバンク「食品主要195社 価格改定動向調査」各年版
32,396
2023年
値上げ品目数
20,609
2025年
値上げ品目数
97.9%
原材料高が
値上げ理由

出典:帝国データバンク「食品主要195社 価格改定動向調査 ― 2025年通年/2026年見通し」(2025年12月26日発表)

値上げの主な要因

出典:帝国データバンク 同調査(値上げ要因の割合は2025年通年データ)

容量を減らして価格を据え置く「ステルス値上げ」も広がっています。見た目の価格が変わらなくても、実質的な値上げが進んでいるのが現状です。

備蓄は節約にもなる:価格が安いうちにまとめ買いしておくことは、将来の値上げに対するリスクヘッジでもあります。

5人口構造の変化

高齢の農家と耕作放棄地

日本の農業を支える人が急速に減っています。農林水産省の調査(2024年)によると、基幹的農業従事者は111万4千人。20年前(2000年)の240万人から半減しました。

出典:農林水産省「農業構造動態調査」(令和6年)

基幹的農業従事者数の推移と将来予測
出典:農林水産省「農業構造動態調査」各年、JA全中推計(2024年1月)、財務省推計(2021年)
69.2歳
農業従事者の
平均年齢
71.7%
65歳以上の
割合
25.7万ha
荒廃農地
面積
36万人
2050年の
従事者予測

出典:農林水産省「農業構造動態調査」(令和6年)、農林水産省「荒廃農地の現状と対策」(2024年)、JA全中「中長期見通し推計」(2024年1月)

「2025年問題」が農業にも

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、営農を断念するケースが急増しています。2025年の農林業センサスでは、個人経営体が約25万も消滅しました。

49歳以下の新規就農者は2023年で15,890人。減少傾向が続いており、農家のリタイアを補えていません。

出典:農林水産省「令和5年新規就農者調査」、農林水産省「2025年農林業センサス」

今が一番食料を手に入れやすい時代かもしれません。10年後、20年後に国内の農業生産がさらに縮小することは、ほぼ確実です。

6シーレーン封鎖リスク

タンカーと海上交通路

日本の貿易量の99.6%は海上輸送です。島国である日本は、陸路で食料やエネルギーを輸入する代替手段がありません。この海上交通路(シーレーン)が脅かされれば、食料もエネルギーも入ってこなくなります。

出典:国土交通省「海事レポート」、日本船主協会「海運統計」

日本の貿易における輸送手段の割合
出典:国土交通省「海事レポート」

4つの海峡リスク

出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書2024」、防衛省「防衛白書」各年版

有事は突然始まります。物流が止まってから備蓄を始めても手遅れです。スーパーの棚が空になるまで、わずか数日と言われています。第二次世界大戦中、米軍は日本の海上輸送路の封鎖(飢餓作戦)で日本を追い込みました。食料自給率が当時より遥かに低い現在、同じことが起きれば影響はさらに深刻です。

7南海トラフ・大和川決壊・富士山噴火

南海トラフ地震の想定震度マップ

食料危機の引き金になるのは、国際情勢だけではありません。日本は自然災害の多発国です。

南海トラフ巨大地震

30年以内の発生確率「80%程度」(2025年1月、地震調査委員会が引き上げ)。最新の被害想定では、最大約32万3千人が死亡、経済被害は約214兆円に上るとされています。

出典:地震調査研究推進本部「長期評価」(2025年1月改訂)、内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定」(2019年最終報告)

80%
30年以内の
発生確率
32.3万人
最大想定
死者数
214兆円
経済被害
想定額

大阪市住吉区は震度6強が想定されています。太平洋側の港湾・工場・農地が津波で被害を受ければ、全国的な物流の長期停止は避けられません。

大和川決壊 ― 住吉区に迫る浸水リスク

住吉区南部は大和川の氾濫により、最大5m以上の浸水が想定されている地域があります。清水丘・遠里小野・苅田南地域の一部は、木造家屋が倒壊・流出する危険性が高い区域に指定されています。

出典:大阪市「住吉区 防災マップ(令和8年2月 保存版)」、国土交通省「大和川水系浸水想定区域図」

富士山噴火 ― 首都圏が機能停止

1707年の宝永噴火をモデルにした内閣府のシミュレーションでは、噴火後2時間で東京都心にも降灰が始まるとされています。

出典:内閣府「大規模噴火時の広域降灰対策について(報告)」(2020年4月)

「3日分の備蓄」では全く足りません。大規模災害では物流の復旧に数週間〜数ヶ月かかります。最低でも2週間分、できれば1ヶ月分の食料と水の備蓄を推奨します。

8ある50代一人暮らしの備え(実例)

備蓄品が並んだ棚

ここまで7つのリスクを紹介しましたが、実際にどう備えればいいのか。住吉区に住む50代の一人暮らしの方が、全て自費で購入・準備している備蓄の実例を紹介します。

携帯用浄水器(手動式)

この方が最初に購入したのが、手動式の携帯浄水器です。住吉区には大和川が流れています。断水が長期化した場合、大和川の水を浄水して飲料水にできます。電気が不要で、手動でポンプを押すだけで浄水できるタイプを選んでいます。

簡易トイレ

マンション住まいのこの方にとって、断水時の最大の問題はトイレです。マンションは水が止まると水洗トイレが使えません。排水管の破損リスクもあるため、水が出ても安易に流してはいけないケースもあります。凝固剤付きの簡易トイレを複数セット備蓄しています。

12V炊飯器 + ソーラーパネル

停電でもご飯を炊ける体制を整えています。12V対応の小型炊飯器とポータブルソーラーパネルを組み合わせることで、太陽光だけでご飯が炊けます。カセットコンロも備えていますが、ボンベには限りがあるため、太陽光という「燃料が尽きないエネルギー源」を確保しています。

水・塩・米 ― 最低限の3点セット

この方は言います。「最低限、水と塩と米があれば人間は生きられる」。米は常時20kg以上をストックし、飲料水はペットボトルで備蓄。塩は安価で長期保存が可能なため、大袋で購入しています。

全て実費で購入

紹介した備蓄品は、全てこの方が自分の判断で、自費で購入したものです。特別な高額品ではなく、いずれも一般に入手できるものばかりです。商品名やリンクは掲載しませんので、気になる方はご自身で調べてみてください。

ローリングストック法のすすめ

ローリングストックとは:「備蓄品を日常的に消費し、使った分を買い足す」備蓄法です。
  • メリット1:賞味期限切れの無駄がなくなる
  • メリット2:常に新しい状態で備蓄を維持できる
  • メリット3:一度に大きな出費をしなくて済む
  • やり方:普段食べる米・缶詰・レトルト食品・水を「少し多め」に買い、古いものから使って補充する

備蓄は特別なことではありません。保険と同じです。何も起こらなければそれでいい。でも、起きたときに何も準備がなければ、取り返しがつきません。

まずはここから始めてみませんか?
  • 水:1人1日3リットル × 14日分 = 42リットル(2Lペットボトル21本)
  • 米:1人1日2合 × 14日分 = 約6kg
  • カセットコンロ + ボンベ3本以上
  • 簡易トイレ:1人1日5回 × 14日分 = 70回分
※ 各種データは出典元の公表時点の情報に基づいています。最新の数値は各公的機関のサイトでご確認ください。
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